1.権利証って?

 所有権や抵当権の登記申請を行ったのち、法務局から「登記識別情報通知書」が発行されます。

少しアバウトにお話しをすると、これを司法書士が製本加工したものが、いわゆる「権利証」というものです。

(この権利証は、実は現在では、「不動産登記権利情報」というのが正式名称ですが、ここではあえて通称としてなじみ深い「権利証」という言葉を使います)


「権利証」は、文字通り、権利の証明書ですが、不動産登記法上はどういう扱いかというと、究極の本人確認書類です。

「権利証」というのは、実は再発行がききません。

だから世界に1つしか存在しないものなのです。

したがって、不動産登記実務上、その権利証を所持している人は、その不動産の所有者本人である蓋然性が非常に高いものとして、登記申請の真実性担保のために、一定の登記申請の添付書面として取り扱われているのです。


2.登録免許税って?

登記申請をする際、国に『登録免許税』という税金を納めなければなりません。

一般的な納付方法は、登記申請書と一緒に貼り付け用紙を合綴し、そこに税額分の収入印紙を貼り付けて納付します。

多くの場合は、登記申請の際に、依頼を受けた司法書士がいったん収入印紙を立て替え購入し、納付していることがほとんどです。(登録免許税が高額な事案では、先に精算していただくこともあります。)

そして、司法書士費用の請求の際に、実際に立て替えた収入印紙代も合算してご請求させていただいています。

 

この登録免許税は、登記の種類によって、税額の計算方法がまるで異なります。

たとえば、売買による所有権移転登記の場合、現行法(平成28年度)では、『固定資産評価額×税率15/100』という計算方法です。

この場合の税額は、固定資産評価額が1,000万円の土地の場合なら15万円、2,000万円の土地なら30万円です。

 

新築建物の所有権保存登記の場合は、まだ固定資産評価額が決まっていない段階なので、国が発表する新築建物の基準単価と、建物の構造、用途を基に司法書士が評価額計算をおこない、その評価額に乗ずる税率は4/1000です。

ただし、居住用住宅の場合は、軽減税率の適用があります。

 

このほかでは、抵当権設定登記の場合は、債権額×4/1000が基本です。

ただし、住宅ローンの場合は、軽減税率の適用もあります。

 

登録免許税の詳しいご説明は、【国税庁HP】をご覧ください。 


3.登記をしないとどうなる?

登記の手続きをするとなると、きっと腰が重いことかと思います。

「司法書士の事務所に行くのは、なんだか面倒だな。」

「今は忙しいから、相談に行く時間がないな。」

「登記すると費用がかかるから、そのうち余裕ができたらにしよう。」

 

このようにお考えになるのも、ごもっともかと思います。

しかし、「登記をきちんとしなかったこと」が原因でトラブルになるケースは、実はとても多いのです。

 

ここでは、当事務所へご相談にみえた人の相談事例をご紹介します。

~土地売買編~

 

ここでは、土地売買を例に説明したいと思います。

 

Bが、Aから土地を買いました。

このとき、AからBへの所有権移転登記の申請はせずに、登記名義はA名義のままにしていました。

Bとしては、「登記すると何かと費用がかかるし、今は忙しいから来年になったら登記をしよう」

軽い気持ちでこのように考えていたようです。

 

1年後、Bが購入した土地を見に行くと、会ったこともないCがその土地のうえに住宅を建築して住んでいました。

どうやら、AがBと売買契約をした後、同じ土地を、より高い価格で買いたいというBにも二重売買したようです。

AはBにこう言いました。

 

「いや悪かったねぇ。手付解除をしようと思って、Bさんにも何度も電話したんだけど、ずっとお留守だったので、後でまた連絡しようと思ってたら、つい忘れちゃって」

 

困り果てたBは司法書士事務所に相談に行きました。

司法書士がこの土地の登記を調査してみると、すでにAからCへの所有権移転登記がなされていました。

 

そこで、BはCを訴えました。

Bは口頭弁論で契約書や領収書を証拠として提示して、

「自分の方が先に買った土地だ。このとおり、購入日もこっちの方が先だし、それにAの実印が押してあるじゃないか。だからCの所有権は無効だ」と主張しました。

 

一方Cは、「そんなこと言っても、もうこの土地に住んでいるのに、今さら返せって言われても返せない」と反論しました。

 

 

このような場合、裁判所はどのような判決を言い渡すでしょうか?

 

今回の事例では、判決の結果は、100%、Bの敗訴です。

 

民法第177条に次の条文があります。

 

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

Bがこの土地の所有権を取得できるかどうかと、Bが主張するような売買の先後は、まったく関係ありません。

 

Bは自分の名義とする所有権移転登記をしなかった以上、第三者Cに対抗できない。

つまりBの所有権は認められないのです。

(AとCが通謀していたような特殊な事例は除きます) 

 

さらに困り果てたBは再度司法書士事務所へ相談に行きました。

 

「一番悪いのはAだ。こうなったらAから土地の売買代金を取り返してほしい」

 

ところがAは、事業に失敗して破産状態でした。

 

Aはこう言いました。

「ない袖は振れないよ。悪いとは思うが、Bさんに返すお金はもうないよ。だってあなたが全然電話に出ないから悪いんじゃないか」

 

結局、Bは土地も手にすることができず、お金も返してもらえなかった。。。というお話です。

 

 

ありそうでない話、なさそうである話・・・

 

皆さんはどうお考えでしょうか。

 

もちろん、道徳的に考えて一番悪いのはAでしょう。

 

もし、Aが上記のような破産状態ではなかった場合であったとしても、任意に支払いに応じてくれなかった場合は、BはAにも訴訟をする必要があります。

 

その際の弁護士費用はいかほどでしょうか。

 

不動産を取得したら、登記はなるべく早くすることをお勧めします。

 


~相続編~

 

物語は少し時代をさかのぼります。

 

昭和40年。

不動産を所有していたAが、亡くなりました。

相続人は妻のB、子のC、D、E、Fです。

 

「葬儀代の支払いもあるから、預貯金の相続の手続きを急ごう」といことで、相続人全員で話し合った結果、とりあえず「Aの預貯金に関しては、Cが相続する」ということでまとまり、Cは銀行からもらった書類に相続人全員のハンコを押してもらい、無事預貯金の解約をしたようです。

 

しかし、Cは、「ようやく法要も終わったけど、なんだかんだ忙しかったから、不動産の相続登記は、また来年にしよう」ということで、相続登記はとりあえず後回しにすることに決めました。

 

1年後、Cは相続登記をすることを、すっかり忘れてしまいました。

 

そして時は流れて、30年後。

Cが亡くなりました。

 

Cには、妻のG、子のH、I、Jがいました。

Cの相続人の代表として、Hが司法書士事務所に相談に行きました。

「Cが亡くなったので、不動産をH名義にしたいんです」

 

今回の事案では、不動産はC名義ではなく、A(Hから見れば祖父)名義のままなので、まずAの相続人全員でCが不動産を相続する旨の遺産分割協議を成立させ、その遺産分割協議書が必要になります。

 

もし、Aの相続人がすでに亡くなっている場合は、その子が相続人たる地位を引き継ぎます。

 

司法書士がHさんに尋ねてみると、Aの妻Bさん、子のCはもちろん、D、E、Fもすべて亡くなっているようでした。

 

Dには子が3人、Eには子が2人、Fには子が4人いました。

ただし、Fの子は4人のうち2人は先妻の子で、離婚の際先妻が引き取っています。

そして、CはAさんが亡くなった当時、不動産に関する遺産分割協議書は作成していなかったようです。

 

 

さて、ここで整理します。

Aの相続に関する遺産分割協議に参加しなければならない人は、13人。

の相続に関する遺産分割協議に参加しなければならない人は、4人。

Aが亡くなった当時に、Cがきちんと不動産の遺産分割協議書を作成していなかったため、A→C→Hへと不動産の相続登記をするために、これだけの人たちの協力が必要となってしまいました。

 

そして、今回のような事案で一番の問題は、Fの先妻の子たちの存在です。

通常、このようなケースでは、残念ながら、音信不通なのが一般的です。

 

いったいどこに住んでいるのか。

どうやって連絡をとったらよいのか。

そもそも連絡取れたとしても、手続きに協力してくれるのか。

 

色々手を尽くした結果、なんとか連絡先が判明し、HがFの先妻の子に電話してみました。

先妻のお子さんの回答はこうでした。

 

「会ったこともないような人のために、なぜ手続きに協力しなければならないんだ。」

 

ごもっともな回答だと思いますが、これではHは不動産の相続ができません。

Hは困り果ててしまいました・・・。

 

 

このように、相続登記を放置していると、相続関係がどんどん複雑化、深刻化します。

相続をめぐって争いになるのは、なにも遺産の分け方だけではないのです

手続きに協力してもらえるのかどうか。

この点をめぐって争いになることの方がむしろ多いように思います。

 

遺産分割協議は相続人全員(もし相続人が亡くなっていた場合はその相続人全員も含めて)で、全員一致で成立させなければなりません。

このうち誰か1人でも手続きに協力してくれない場合、遺産分割協議不成立ということになります。

 

こうなってしまうと、裁判をする以外に相続登記はできません。

相続に関する裁判は、非常に時間と労力とお金がかかります。

 

今回の事案では、そもそもCがきちんと相続登記さえしていれば、こんなことにはなりませんでした。

 

 

あなたのお家はきちんと相続登記されていますか?

あなたのご実家はきちんと相続登記されていますか?